地球温暖化が進む中、政府は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成すると宣言しました。それに伴って住宅の省エネ基準の義務化やZEHの推進に向けた取り組みが進んでいます。

最近は、家づくりにおいても性能重視の傾向がかなり強まっています。現在家づくりを計画されている方も、住宅会社などを比較・検討されている中で、「高気密・高断熱」、「UA値」、「C値」、「HEAT20」・・・といった、これまでに聞き慣れない用語を耳にする機会が多いでしょう。

住宅の省エネ化を実現するには、断熱性能を高めることが必要不可欠です。では、そもそも重量鉄骨造住宅と木造住宅のどちらが断熱性能に優れているのか。また、重量鉄骨造住宅の断熱性を上げるにはどうしたらいいのかについてご説明します。

 

 重量鉄骨造と木造、断熱性能はどっちがいいの?

木造と鉄骨の断熱の違い

「重量鉄骨造」は、重量鉄骨の柱と梁で骨組みをつくります。一方、「木造」は、木製の柱や梁、筋交などをつかって骨組みをつくります。しかも、重量鉄骨造には、厚さ6mm以上もの分厚い鉄骨がつかわれるため、耐震性や耐久性が非常に優れています。木造住宅と比べても、素材自体の強度が異なるため、その差は歴然です。

一方、本題の「断熱性能」については、木造住宅と比べて優れているとは言えません

なぜなら、鉄は木よりも熱伝導率が144倍も高いからです。

熱伝導率とは、その物質がどの程度熱を伝えやすいかどうかを示す指標。熱を伝えやすい物質ほど、熱伝導率が高くなります。つまり、熱伝導率が高いということは、外気温の影響を受けやすいということを示します。

 

重量鉄骨の場合は、鉄骨が骨組みなので、当然夏は室内が暑く、冬は寒くなりやすい傾向があります。鉄骨造の建物で、鉄骨部分が外気温を屋内に伝え、断熱性能を低下させる現象のことを「ヒートブリッジ(熱橋)」と呼びます。

さらに、鉄は温められれば膨張し、冷やされれば縮まる特性があるため、家に隙間が生まれやすく、気密性についても高気密・高断熱の木造住宅ほどの高い数値は得られません。

 

しかし、当社で重量鉄骨造の家を建てたオーナー様に、これまで夏の暑さや冬の寒さのことでご相談を受けた経験は一度もありませんそれは、家づくりの段階で、重量鉄骨住宅のメリット・デメリットを正直に、しっかりとお伝えしていることが大きな理由の一つかもしれませんが、ご計画の段階で、「暑さ・寒さ対策をしっかりと行いたい」「断熱性能をできるだけ高めたい」というご要望がある場合には、しっかりと断熱性能を高める対策をとっているからです。

では、重量鉄骨造住宅の断熱性能を高めるにはどうしたらいいのか、次項でご説明します。

 

重量鉄骨造の断熱性を高める方法1:断熱材

重量鉄骨造の家でも、断熱性を高める工夫がしっかりと施されていれば、暑さ・寒さに悩まされることなく、快適に過ごせます。

重量鉄骨造の家の断熱性を高める第一の方法は、木造住宅と同様に、建物に断熱材を入れて熱や寒さが室内に伝わるのを防ぐことです。

中村建設では、発泡ウレタンフォームの吹き付け断熱を採用し、建物の断熱性を高めています。発泡ウレタンフォームの吹き付け断熱は、スプレーガンを使ってウレタンの原液を発泡させながら壁に吹き付けていきます。スプレーガンでの吹き付けを複数回繰り返し、ピンで断熱層の厚みを確認しながら施工していきます。

そのため、重量鉄骨造のパイプスペースや、窓まわりなどの施工しづらい部分まで隙間なく断熱材を充填できるというメリットがあります。

発報ウレタンの吹き付け

吹き付け断熱によって、外気からの影響を最大限に抑えることができ、冷暖房の効率も高まって、省エネ性が高まります。

 

重量鉄骨造の断熱性能を高める方法2:窓

窓からの冷気

住宅の中で、冬に室内の暖かい空気が一番逃げていく場所は、「窓」です。実際に、家の中の暖かい空気の58%は窓から逃げていくといわれているほど、窓の熱損失は大きいのです。

そのため、重量鉄骨造であっても木造であっても、住まいの断熱性能を高めるには、断熱性能の高い窓を採用するのが効果的です。

窓は、ガラスの間に空気の層を作ることで、断熱効果が高まります。複層ガラスは、2枚のガラスの間に中空層があるため、単板ガラスよりも高い断熱効果が得られます。

また、サッシのフレームも、アルミと樹脂では熱伝導率に大きな違いがあり、樹脂サッシはアルミサッシの1/1200以下の熱伝導率で、気密性もアルミより優れています。

 

サッシにはいろいろな種類がありますが、上記など理由から、最も断熱性能が低いのは、昔からある「アルミフレーム+単板ガラス」の組み合わせで、熱貫流率が6.51w/(㎡・k)。

一方、最も断熱性能が高いのは「樹脂フレーム+ダブルLow-Eトリプルガラス」の組み合わせで熱貫流率が0.91w/(㎡・k)。ちなみに、「ダブルLow-Eトリプルガラス」とは、Low-E複層ガラスを使い、2枚のペアガラスにさらにもう1枚加えて、合計3枚のガラスを使っているガラスのことです。

さらに、リフォームの場合には、内窓をつけると窓と窓の間に空気の層ができるため、大きな断熱性を発揮します。

 

まとめ

このように、重量鉄骨住宅は木造住宅と比べて断熱性能は劣りますが、断熱材を施したり、窓の断熱性能を高めたりすることで、断熱性能を高めることが可能です。

また、全館空調や第1種換気システム、床暖房などを採用し、快適な住環境を保つ方法もあります。

昨今、家づくりにおいて性能が重視されてはいますが、性能だけをものさしにして、地震に断然強く、耐久性にも優れ、大空間・大開口が叶うといった重量鉄骨造の本来のメリットを二の次、三の次にするのは本末転倒です。

重量鉄骨住宅でも、工夫次第で断熱性能をしっかりと確保できることを理解した上で、本当にご自身の目的に合った住宅を選択しましょう。

 

Writer>>>中村建設(株)住宅事業部 家づくりアドバイザー 中村真由美

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