「このまま住み続けられるだろうか?」
築30年以上の住宅にお住まいの方なら、誰もが一度は不安を感じられるのではないでしょうか。
水回りの老朽化、断熱性能の低下、そして何より、年を重ねるごとに感じる住まいの使いづらさ・・・特に高齢者の家族と暮らす場合、その不安は切実なものとなります。
しかし、リノベーションを適切に行うことで、築年数を重ねた住まいが、今の暮らしに合った安全・快適な住空間へと生まれ変わります。
当記事の前編では、高齢者と高齢者の快適な暮らしを実現するリノベーションについて、バリアフリー化と水回りの改修を中心にご紹介しました。
しかし、高齢者に優しい住まいづくりでは、安全性の確保だけでなく、夏の涼しさや冬の暖かさなど、温熱環境に配慮した空間づくりも重要です。
そこで後編では、そのための秘訣や、将来の暮らしを見据えた設備選びや収納計画についてご説明します。
前編の記事もぜひご一読ください。
Point4:冷暖房効率と快適性の向上
<断熱性能の向上>
高齢者の健康維持において、住まいの温熱環境は極めて重要です。
WHO(世界保健機関)は、高齢者の健康を維持するための室温として、最低でも18℃以上を推奨しています。特に、日本の住宅は欧米に比べて断熱性能が低く、冬場の寒さが深刻な健康リスクとなっています。
最も警戒すべきは、温度差によって引き起こされるヒートショックです。暖かいリビングから寒い浴室への移動など、急激な温度変化は血圧の急上昇を引き起こし、最悪の場合、心筋梗塞や脳卒中などの重大な事態を招く可能性があります。実際に、入浴中の事故による死亡者数は交通事故による死亡者数を上回るとも言われており、その多くが高齢者です。
このような健康リスクを軽減するためには、住まい全体の断熱性能を向上させ、部屋間の温度差を最小限に抑えることが重要です。具体的には、次のような対策が有効です。
・窓の断熱リフォーム
窓の断熱リフォームは、最も効果の高い対策の一つです。内窓の設置や断熱性能の高いサッシへの交換により、冷暖房効率が大きく向上します。特に、古い住宅ではアルミサッシの性能が低いケースが多く、改修効果が高くなります。
・構造部分の断熱補強
壁・床・天井の断熱強化も重要です。断熱材の追加や、断熱性能の高い内装材への交換により、室内温度の安定化が図れます。特に、浴室や脱衣所など、温度差が生じやすい場所の断熱強化は効果的です。
・結露対策
家族の健康を維持し、住まいの耐久性も維持するには、結露対策も重要です。結露は、カビやダニの発生原因となるだけでなく、建材の劣化も引き起こします。適切な換気システムの導入と合わせて、結露の発生を防ぐ工夫が必要です。
【施工事例より】
YKK製の内窓を全面的に設置し、断熱性能を大幅に向上。「以前は寒さを感じていましたが、今では日中、暖房をつけなくても快適に過ごせます」とお施主様は実感を語られています。
Point5:将来を見据えた設備選び
<安全性と使いやすさの両立>
設備機器の選定は、現在の使いやすさだけでなく、将来的な使用も見据えて検討します。
・操作がシンプルな設備の選択
操作がシンプルな設備を選択することは、誤操作防止の観点から重要です。特に、給湯器やエアコンのリモコンは、ボタンが大きく、表示が見やすいものを選びましょう。最近では、スマートフォンと連携して遠隔操作が可能な製品も増えており、家族による見守りにも活用できます。
・誤操作防止機能付きの機器の採用
誤操作防止機能付きの機器採用も検討します。IHクッキングヒーターの切り忘れ防止機能や、お湯の温度制御機能など、安全性を高める機能が充実した製品を選ぶことで、より安心な暮らしが実現できます。
・メンテナンスが容易な製品の選択
メンテナンス性への配慮も重要です。フィルターの清掃や消耗品の交換など、日常的なメンテナンスが容易な製品を選ぶことで、長期的な使用が可能になります。
【施工事例より】
キッチンではIHクッキングヒーターを導入し、火の始末の心配がない安全な調理環境を実現。浴室では、ボタン一つで湯はりができる使いやすい設備を採用しています。
<省エネ性能>
光熱費の削減につながる設備選びは、長期的な経済性を考える上で重要です。高効率給湯器や節水型の水栓など、初期投資は多少かかっても、ランニングコストの削減が期待できる設備の導入を検討しましょう。
Point6:収納計画の最適化
<使いやすい収納づくり>
収納は、生活のしやすさに直結する重要な要素です。
・取り出しやすい高さへの配慮
収納スペースは、取り出しやすい高さへの配慮が基本となります。最も使用頻度の高いものは、床から80〜120cm程度の位置に収納することで、無理のない姿勢での出し入れが可能になります。重いものは低めの位置に、軽いものは上の棚に、といった使い分けも有効です。
・収納内の見やすさも重視
収納内の見やすさも重要です。引き出しタイプの収納や、回転式の棚を採用することで、奥のものまで取り出しやすくなります。また、収納庫内の照明設置も、使いやすさを高める有効な手段です。
・十分な収納量の確保
十分な収納量の確保は、整理整頓のしやすさにつながります。階段下のスペースなど、デッドスペースを有効活用することで、効率的な収納計画が可能になります。
・使う場所にしまう場所を確保
収納は、ものを使う場所に、それをしまう場所を確保することが基本です。ものをしまう場所までの移動距離が長いと、ものを片付けずに出しっぱなしにすることが多くなり、部屋が散らかる原因となります。
【施工事例より】
階段下のスペースを有効活用して広い収納を確保。キッチンの収納も使いやすく配置され、家事動線を考慮した設計となっています。
Point7:信頼できる施工会社選び
<リフォーム業者の選定のポイント>
リフォーム成功の鍵を握るのが、施工会社の選定です。
・リフォーム実績の確認
リフォーム実績の確認は、会社選びの基本となります。特に、高齢者向けのリフォーム実績があるかどうかは、重要なチェックポイントです。その会社の施工例やお客様の声を参考にしたり、完成見学会に参加したりして、その会社の実績を確認してから選択しましょう。
・アフターフォロー体制の確認
アフターフォロー体制の確認も重要です。工事完了後のメンテナンスや、急な修理への対応力など、長期的なサポート体制が整っているかどうかを確認しましょう。
・提案力と対応力
提案力と対応力も、重要な判断基準となります。施主の漠然としたイメージや要望を、具体的な提案として示せる能力があるかどうかをチェックします。
・コミュニケーション力
コミュニケーション能力は、スムーズな工事進行の要となります。打ち合わせ時の対応や、質問への回答の的確さ・迅速さなどから判断することができます。
【施工事例より】
今回のお施主様は、LINEを活用した円滑な情報共有や、各専門家との連携、実際の施工事例の見学機会の提供など、当社のきめ細かなサポートを高く評価いただけました。
まとめ:リノベーションで成功するために
高齢者との快適な暮らしを実現するリノベーションでは、現在の不便さを解消するだけでなく、将来の暮らしを見据えた計画が重要です。
特に注意したいのは、「必要な改修」と「あったら便利な改修」を明確に区分し、予算配分を適切に行うことです。また、工事の優先順位を決める際は、安全性に関わる改修を最優先するよう心がけましょう。
リノベーションは、住まいの器を整えることですが、そこに住まう人の生活習慣や好みも重要な要素です。家族で十分に話し合い、理想の住まいのイメージを共有しながら計画を進めることで、より満足度の高いリノベーションが実現できるはずです。
Writer>>>中村建設(株)住宅事業部 家づくりアドバイザー 中村真由美
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